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ドイツで〜 ちえぞうが〜 活版印刷工房に〜 であったぁ〜〜(前編)

そう。ウルルンです。夏の旅行の間に、実は私、ウルルン体験をしてしまいました。

「活版印刷」というのをご存知でしょうか?
鉛でできた文字のはんこ(「活字」といいます)を並べて版を作り、そこにインクをのせて刷るという昔ながらの印刷方法です。

レイアウトから製版まで全部デジタルでできてしまう現在、この超アナログ印刷は絶滅寸前だそうですが、いらなくなった機械や活字を印刷所から譲りうけて細々と活版印刷を続けている工房が、日本にも世界にもまだいくつかあるそうです。

ミュンヘンにもそんな小さな工房があるということを仲良しの編集者Tさんに教えてもらったのは、日本を発つ前でした。
「気軽に見学させてもらえるし、その場で作品も買えるし、オススメだよ!」
とのことだったので、ミュンヘンにいる最初の2ヶ月の間にぜひ行こうと思っていました。
ところが何度電話しても留守番電話…。ついに時間切れとなり、ミュンヘンを去ってしまいました。

今回夏の旅行で再びミュンヘンにやってきて、友人が来るまで時間があったので、よし今度こそは!と、また何度か電話してみましたが、やっぱり留守電…。
こうなったらイチかバチか、押しかけるしかない! ということで、8月1日水曜日、住所だけを頼りに単身乗りこむことにしました。

地下へ続く目立たない小さな階段の奥に、活版印刷工房「Fliegenkopf」と書かれた小さな扉…。
あける時はかなりドキドキしましたね。なんせアポなし突撃ですから。
でっかい頑固オヤジに「こら!」って言われたらどうしよう〜とびくびくしながらノックすると、中から「どうぞ〜!」と、明るい声。

ドアを開けると、なごやかに談笑中の男女3人。
「いらっしゃいー、ようこそー!」と予想外のウェルカムです。
どぎまぎしながら自己紹介をし、3人の輪の中に入れてもらいました。

3人の中で、ペラペラペラっと快活によくしゃべるすごく人の良さそうなおばちゃんが、工房のご主人クリスタさんでした。

植字工のマイスターとして修行を積み、定年後独立してこの工房を作ったそうです。
主な活動は、活版印刷を生かした作品作りやワークショップ。
週に何回か手伝いにきてくれる相棒はいるものの、基本的に一人でマイペースにやっているので毎日工房に来るわけではなく、水曜はたまたま出てくる日だったそうです。

いやー、なんてラッキーな私!

あとの2人は私と同じように見学に来ていた人たちで、その方々の質問に便乗させてもらう感じでたくさんの作品ファイルを見せてもらったのですが…、

す、すげーーー!!

正直「活版印刷=昔の印刷」くらいのイメージしか持っていなかった私には衝撃でした。

これが活版か!
これがタイポグラフィーというやつか!
文字って、なんて…、
美しい〜!

特に凝った色や絵を使っているわけでもなく、ぶっちゃけて言えば文字が並んでいるだけ。
レイアウトだってパソコンで作ってしまえばちょちょいのちょいに見えるのですが…、

違うんですよねー。
なんといっても空間が絶妙なんです。全ての字間、空間にスキがない。
文字の世界をを知り尽くしたマイスターだからこその芸術作品、という感じでした。

ポスター、しおり、豆本、グリーティングカード、絵本作家や製本職人とのコラボレーション作品や日本から取り寄せた和紙を使ったジャバラ式の本…次から次へと見せてもらって、私はもう興奮状態。
すっかり文字の世界のとりこになってしまいました。

2人のお客さんが帰った後も、名残惜しくて一人で直売コーナーのしおりなどをあさっていた私。ふと前を見ると、ちっちゃな金属の板がたくさん置いてあります。
勇気を出して「これは何に使うんですか?」とクリスタさんに聞いてみました。

するとクリスタさん、「これはね…」としゃべりながら、突然素早い手つきで版を組み始めるではありませんか。
おおー、マイスターの技が目の前に!すごい!贅沢!

さらに、
「例えばCHIEというのはね…」
と、活字の入った引き出しをあけ、私の名前を組み始めるではないですか。
おおー、マイスターが!私のために!目の前で!活字を!
ひろって!く、れ、て、い、る〜!!

きゃーっ、いいのいいのっ?
と思っている間にあっという間に組み上がり、
「これ、せっかくだから刷ってあげたいけど、今日はもう印刷機のインクが乾いちゃったからできないのよ。残念ねー」
いえいえ! そんなそんなっ! 恐れ多いです!

「そうだ、いつまでミュンヘンにいるの? 金曜か日曜日あいてる? また来たら、名刺とかカードとか刷ってあげるよ」
ひゃ〜!! そんなの、ありですかっ?ありなのですかっ!
……あ、え、でも、それはその…お値段、の方は…?

「30枚や40枚刷るのなんか、タダよ。気にしないで」
うはーっ! なんという展開っ!

というわけで、鼻息も荒く「金曜のお昼に来ます!」と約束して帰ろうとすると、「私も帰るから、いっしょに出ましょう。そうだ、トラム(路面電車)で帰りましょう。その方が楽しいから!」
と、うきうきとトラムの停留所に向かうクリスタさん。

そこから私の降りる中央駅まで、景色を見ながら「これがイザール川でね、これがオペラ座で…」と、まるで観光ガイドのように説明をしてくれるマイスター。
なんだこれは…。まるで旧知の仲のような雰囲気ではないですか。

クリスタさんの持つあまりに温かい雰囲気に包まれ、トラムを降りて一人になった私は、充足感のあまりしばらくぼへーっとしてしまったのでした。

いやあ、これを人徳というのでしょうね。

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小さな入り口を入ると…









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壁にはクリスタさんの作品の数々。









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カオス!








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これ、大好き。









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活字がぎっしり詰まった棚。今はもう生産されていないので、のみの市なんかで買い集めているそうです。お宝…!






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直売コーナー。目移りしてしまって選べません。







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詩の一節をモチーフにしたジャバラ式豆本が特に素敵でした。これは全部広げて並べたカタログ。






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仕事場です。とってもこぢんまり。








というわけで、前編はこのへんで。次回、さらに濃い出来事が待っております。
お楽しみに〜。

(活版印刷工房「Fliegenkopf」のHPはこちら。クリスタさんの作品もいろいろ見られます)
http://www.fliegenkopf.pixellook.de/fliegenkopf.htm

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コメント

久しぶりにのぞいたら、素敵なマイスターの話が☆すてきすぎるーそんなものづくり!そして、アポなしでえいっといった勇気もすてき!

投稿: エミコ | 2007年9月11日 (火) 23時46分

おおー、エミコや〜!
見にきてくれてありがとう。
もうすぐ個展なんやね。
見に行けないのがすごーく残念やけど…。
がんばってね!

投稿: ちえぞう | 2007年9月12日 (水) 02時34分

こんにちは、ちえぞうさん。はじめまして!
私は日本で活版印刷をしているデザイナーで、クリスタとは去年知り合ってから色々連絡を取り続け、先日1週間半ほど制作のためにFliegenkopfにいました。
ちえぞうさんのカード見ましたよ!!クリスタは相変わらずパワフルでした。ちえぞうさんはミュンスターにいらっしゃるんですか?来月のフランクフルトのブックメッセに向けて、クリスタは新作をいくつか作ってましたので、是非行ってみて下さい。

投稿: たまねこ | 2007年9月26日 (水) 17時44分

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