« ドイツで〜 ちえぞうが〜 活版印刷工房に〜 であったぁ〜〜(前編) | トップページ | 夏の旅日記(後半) »

ドイツで〜 ちえぞうが〜 活版印刷工房に〜 であったぁ〜〜(後編)

さて金曜日、約束の時間に工房を訪れると、奥で機械のお手入れをしていたクリスタさんは、「あら、来たのねー」と、やはり何年も前からの知り合いのように出迎えてくださりました。

「はいはい、じゃあまず、これをつけてね」
と最初に手渡されたのはエプロン。
あらら、私も? と思いながら、とりあえず装着しました。

まずはどんな物を刷るか、作戦会議です。
名刺がいいなーと思っていたのですが、あまり具体的には考えていなかった私。
「文字だけじゃなくてお花とかの活字もあるよ」
とのことだったので、動物もあるかと聞いてみると、
「ほら、ここに。」
ジャンと引き出しが開き、中にはありとあらゆる動物の活字がぎっしり!
「うひゃ〜、すごい〜」と急騰するテンションをおさえながら私が選んだのは、やはり「ちえゾウ」のゾウさんでした(笑)

「文字は? 住所や電話番号も入れられるよ」
とのことでしたが、今後変わる可能性のことも考えて、シンプルに名前だけにしました。
(今思えばメールアドレスくらいは入れといてもよかったなーという気がします…)

プランが決まり、いよいよ組版開始。
再びマイスターの奥義が目の前に〜!

パッパッパッと活字の入った引き出しを開け閉めし、必要な活字をぽいぽいと拾い、込め物(空間を埋めるための、文字の彫られていない金属板)を膨大な種類の中から適切に選び、手元で素早く組んでいく…。

あらあらと思っている間にあっという間に、このように組み上がりました。

P1090485 手前に写っているのは、組版用の器具です。










「じゃあ、試しに刷ってみましょう!」ということで、輪転機のもとへ。
インクの缶をあけ、コテのようなようなもので輪転機のドラムにちょいちょいと塗りつけていきます。
P1090492 これがインク。










P1090504 「インクはちょっとでいいのよ」と言いながら作業するクリスタさん。








輪転機のスイッチを入れると、ぐるんぐるんとドラムが回り、あっという間にインクがのばされていきます。

P1090505 ほんのちょっと塗っただけなのに、のびるとこのような感じに。








名刺サイズの幅に切った紙と、先ほど組んだ版をセットし、ハンドルをぐるんと回すと、一枚刷り上がり。
刷った物を見ながら、ゾウの位置や字間の調整などをして(これまたマイスターの秘技登場!)、
ちえぞう名刺の版が完成しました。いよいよ本刷りです。

私が「二色刷りにしたい」と贅沢を言ったので、まずは赤色で刷るゾウさんだけをこのようにセット。
P1090500 下と右を強力磁石で固定しています。










何枚か刷って「これでOKね」となったところで、クリスタさんがひと言、
「じゃあ、やってごらん」

…え?
…やって…ごらん…?

輪転機は見るからに年代ものだし、クリスタさんの手つきはまさに職人技。
こんなド素人が大事な機械に触ってもいいんですか!?
…と、恐れおののいてる暇もなく、マイスターの指導がはじまりました。
P1090495 まずこのペダルを踏むと…










P1090494 紙を挟んでる丸いやつがちょっと持ち上がるので、このように紙をセットして…









P1090499 ハンドルをぐるんと回すと、このように全体が版の上をガショーンと左から右へ移動し、









P1090497 このように刷り上がります。










最後まで回しきったら紙をはずし、ハンドルを逆に回してもとの状態に戻します。

一見簡単そうなのですが、このハンドルがけっこう重くて、しかも回したり止めたりする力加減がけっこう難しいのです。

P1090493_2 びびりながら作業する私。クリスタさん撮影。













力加減を間違えて何度もガシャーン!ガシャーン!とでかい音をたててしまい、そのたびに
「ひい〜、壊してしまう〜っ」
と焦りながら作業を続けていると、なんとマイスター、
「私、ちょっと買い物に行ってくるから、その調子でやっといてね」

…出て行ってしまいました。
このどこの者とも分からない外国人一人に大事な工房を任せて…。

「なんだこれ。なんでこんなに信用されてるんだ。もし私がいろんな物を盗んでトンズラしたらどうするんだ!(しないけどさ〜)」
と、かなりたまげました。

ガションガションと一人ぼっちで作業し続けている間、「この状況、何かに似てるよなー」思ってて、その時気づいたんです。

これは、ウルルンじゃないか。
こういうのを、「世界ウルルン滞在記」というのではないか!
と。

長年修行を積んだプロのところへ突然押しかけて、超短期間の弟子にしてもらう。
これで最後に自分でデザインした作品をマイスターにプレゼントしたりすれば、完璧にウルルン滞在記ですよ。

てなことを考えながら大量のゾウさんを刷り終わった頃、「いけてるー?」と言いながらクリスタさんが帰ってきました。

次は黒字で名前を刷ります。
ドラムと組版についた赤いインクをきれいに拭き取り、黒インクを新たに塗り直さなければなりません。
この作業がけっこう大変。根気よく雑巾でドラムをこすり続けなければならず、気分はすっかりお弟子さんです。

インクと版のセッティングができたら、また同じ作業の繰り返し。
いやあー、重労働でしたね。
そしてついに…、

P1090502 じゃーん!実際はこの倍はあったので、全部で120枚くらいでしょうか。誰だ、30〜40枚と言ったのは(笑)








「みんな私の作品は高いというけれど、この作業を体験した後はそんなこといわなくなるのよ」
とクリスタさん。
…たしかに何も言えません。もうへとへとです。こんな事を毎回しているあなたはすごいです、マイスター。

最後に紙の上下を名刺サイズに合わせて切って、完成!!バンザ〜イ!
と喜んでいたのは私だけでなく、クリスタさんも満足そう。
完成した名刺を「私も記念にもらうわね」と2枚、大事にとっておかれたのが、私としても非常に嬉しかったです。

工房に来たのは12時半、できあがったのは16時ごろ。
実に3時間半におよぶ作業でした…。
へとへとに疲れたけれど、なにもかも面白くて、クリスタさんにいろいろ教えてもらえたのも幸せで、つい最後に
「弟子はとらないんですか?」
と尋ねてしまったほど。

「弟子はいないのよ。もう年だし、そんなに作業しないからアシスタントは必要ないしね」
とのお答えでした。もったいないー。こんな素敵なマイスターなのに。

最後にきっちり包装までしてもらって、私の名刺は完成しました。
せめて紙代とインク代だけでも払わないと、クリスタさんの方に足が出てしまうと思い、そう言ったのですが、
「その話はもうしたでしょ。お金はいらないの!」
と強く言われてしまいました。それどころかパンフレットやポストカードまでいろいろもらってしまい、恐縮しきって工房をあとにしたちえぞうでした。

別れ際に「ウルルン」はありませんでしたが、それは再会を約束したから。
クリスタさんはフランクフルトのブックメッセでも毎年ブースを出されているらしく、
「10月にまたフランクフルトで会いましょう!」
と約束したのです。

大好きなマイスターに会うためにも、フランクフルト、ぜったい行こうっと。

|

« ドイツで〜 ちえぞうが〜 活版印刷工房に〜 であったぁ〜〜(前編) | トップページ | 夏の旅日記(後半) »

コメント

すごい素敵な出会いと体験だね!
今日、個展がさらに決まって、しかも、東京の銀座で☆
人との出会いのおかげ。
ちえぞうも、マイスターとの出会いみたいに、素敵な出会いにこれからも恵まれますように☆

投稿: エミコ | 2007年9月20日 (木) 19時34分

前半を読んだだけで、先ほどコメントしてしまいました。詳しく写真撮られてますね。すばらしい!!私なんてクリスタに「ほら次ぎ〜!!」と押されまくってかなり写真忘れました。最初に訪れた時の3人はJurgenとKnabでしょうか。ちえぞうさんが作業されてる写真もクリスタから見せて貰いました。
ブックメッセ行ったらクリスタによろしくお伝え下さい!(luftkatzeでわかります)

投稿: たまねこ | 2007年9月26日 (水) 17時54分

>エミコ
東京進出やんっ、おめでとう!
私も人との出会いのおかげで、いろんな体験をさせてもらえてるなーと、ドイツの地で改めて感じてます。
>たまねこさん
たまねこさんのことは、クリスタさんから聞いていて、雑誌の記事も読ませていただきました!
ブログを見に来てくださるなんて、ほんと光栄です。うれしいー。
写真は「ちょっと買い物行ってくるから」の間に今しかないと思って撮りました。
クリスタさんがいたら、たしかに無理です(笑)
来週末、いよいよメッセに行ってきます。
クリスタさんに会えたら、「Luftkatzeさんから連絡いただきました」とお話ししますね。

投稿: ちえぞう | 2007年10月 7日 (日) 04時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ドイツで〜 ちえぞうが〜 活版印刷工房に〜 であったぁ〜〜(前編) | トップページ | 夏の旅日記(後半) »